2012年、日本では「古典の日」が法制化されました。この日が設けられた背景には、日本文学の代表作である『源氏物語』の存在を歴史的に確認できる重要な日付が関係しています。平安時代に活躍した著名な女性作家・紫式部が記した『紫式部日記』には、1008年(寛弘5年)11月1日の日付で、『源氏物語』の存在が記されています。この記述が、日本最古の長編小説とされる『源氏物語』の確かな足跡として後世に受け継がれ、まさにその日付を元に「古典の日」が設定されました。
「古典の日」が制定されたもう一つの大きなきっかけは、2008年に行われた「源氏物語千年紀」でした。これは、『源氏物語』が千年という歳月を超えて人々に読み継がれていることを記念して全国で様々な行事が催され、日本人にとっての古典文学の大切さや文化的価値が再認識される契機となりました。こうした流れを受け、古典を大切にし、次世代へと伝えるための具体的な行動を促す日として「古典の日」が法的に位置付けられることになったのです。
この日を通じて、日本の文化や歴史の根底にある文学や芸術作品を改めて見直し、古典を深く理解することで、現代に生きる私たちが失いかけている「日本らしさ」を再発見する機会を提供する意義が込められています。古典を通じて、時代を超えた知恵や感性に触れ、その美しさと奥深さを次世代へと語り継ぐ――「古典の日」は、そんな思いが形となった、日本の文化遺産を未来へつなぐ大切な一日です。